「A社から5000人分の個人情報が流出!」というニュースを目にしたとき、そこに会員登録している人が不安になるのは当然ですが、そうでない人でも自然と企業の管理責任を問う気持ちが起こると思います。
記憶に新しい事件としては、2014年7月に通信教育の『進研ゼミ』で知られる株式会社ベネッセコーポレーションから2070万件の個人情報が流出した件や、2017年には日本年金機構が民間に委託したデータ入力が、さらに中国の業者に下請けに出されて500万人分の個人情報が流出した可能性があった件などが思い出されます。
でも、個人情報の流出は企業だけの話ではありません。私たちがパソコンを廃棄したり下取りに出すときは、きちんとデータを消去しておかないと、自分だけじゃなく他人の個人情報まで流出させてしまい、賠償請求を求められる可能性もあります。
一度洩れてしまったプライバシーは、二度と取り返すことはできません。そうならないために、パソコンのデータ消去に関する間違った常識と確実かつ簡単な方法について紹介します。
専門の業者なら任せて安心、とは言えないのが現実
パソコンを処分するとき、ハードディスクに保存されているデータを消去する方法は、次のようなやりかたが多いのではないでしょうか。
- ゴミ箱を空にしたりDeleteキーで削除する
- OSを再インストールしてハードディスクを上書きする
- ハードディスクをフォーマットして初期化する
- パソコンメーカーや回収業者を信頼して処理を任せる
1~3の方法は、一見するとデータは消えたように見えても、実はまだハードディスクの中にしっかり残っています。
とくにゴミ箱を空にしたりDeleteキーで削除するだけでは、市販のデータ復元ソフトを使って簡単に復元できることも珍しくありません。
OSの再インストールやハードディスクのフォーマットを行えば少しはデータを取り出しにくくなりますが、これでも大丈夫とは言えません。
そして意外と多いのは4番の「パソコンメーカーや回収業者を信頼して処理を任せる」方法ではないでしょうか?
2003年10月1日以降から個人向けに販売されているパソコンには、あらかじめリサイクル料金が含まれており、追加の費用なくメーカーに回収させることができるため、パソコンのデータを消去せずに廃棄してしまう人が多いようです。
大手のパソコンメーカーなら責任をもって処理してくれるだろうと期待しがちですが、実際に廃棄処分を行っているのは下請けのリサイクル業者ですから、そこから個人情報が洩れてしまうこともあります。
2017年02月24日付けの岐阜新聞Webからの引用:
岐阜県美濃加茂市教育委員会は23日、市内の中学校で使用され、業者に廃棄処分を委託したパソコンの内蔵ハードディスク(HD)1台がインターネットのオークションで落札され、HDに生徒ら約750人分の名前のデータが残っていた、と発表した。流出経路を調べ損害賠償請求も検討している。
他人を信用せずに、個人情報は自分で守る
では、どうすれば確実(と言えるレベル)にデータを消去できるか? その具体的な方法について紹介します。
HDDを物理的に破壊する
最も確実かつ安心な方法は、パソコンからハードディスクを取り出して破壊してしまうことです。その方法としては、
- 電動ドリルで穴を開ける
- ハンマーなどで叩き壊す
などがありますが、どこの家庭にも電動ドリルがあるわけではありませんし、ディスクを取り出すために特殊な工具が必要なこともあります。
これらの方法は作業中にケガをする危険もありますし、そもそも多くのパソコンユーザーにとっては、パソコンからハードディスクを取り出すのは敷居が高い作業でしょう。
データ消去専用アプリケーションの利用が簡単で確実
誰にでも簡単にできて、確実と言えるレベルでデータを消去する方法は、やっぱり専用のアプリケーションを使うことでしょう。
幸い、データ消去アプリケーションは有料ソフトでも価格が手ごろですし、一度購入すれば他のパソコンでも使える場合が多いので、一つあると安心かつ便利です。※ライセンスについては製品ごとにご確認ください。
購入にあたって注意すべき点は、対応するOS(ここではWindowsに限ります)のバージョンです。
ほとんどのデータ消去アプリケーションはWindows 7以降に対応していますが、中にはWindows 8の場合は8.1にアップデートしてからでなければ使えなかったり、それよりも古いVistaやXPには使えないものもあるので、購入時には処分したいパソコンのOSに対応しているかどうかを確認してください。
ドライブイレイサー(ソースネクスト)
ハードディスクを消去するアプリケーションにもいろいろありますが、価格も手ごろで使いやすいものというと、ソースネクスト社が販売している ドライブイレイサー があります。
個人利用なら複数のパソコンで使用することができ、対応するOSも起動ディスクを作成すればWindows VistaやXPにも使える汎用性の高さがポイントです。
ハードディスクの消去は所有者の責任
パソコンの処分はテレビやオーディオのような家電製品と違って、必ずしもお金を払えば完全に処分できるというものではありません。
もし廃棄処分を行う業者がハードディスクからあなたや知人の個人情報を抜き取ったり、メールや日記、画像などのプライベートな情報を使って脅迫するということもあり得ます。
パソコンのセキュリティ対策というと、そのパソコンを使っているあいだだけのことと思いがちですが、最後の最後に油断すると、一大事を招くことになりかねません。
パソコンを手放すときは、必ずハードディスクの完全消去をお忘れなく!