スマートフォンやタブレットPCが急成長する中、パソコン市場では「Ultrabook」と称するノートPCを見ることが多くなりました。
そこで今回のテーマは、
Ultrabook(ウルトラブック)とは何なのか?
今までのノートPCとはどう違うのか?
その答えは、いつもの『知っ得!パソコン塾』編集部の2人の会話から明らかになる!・・・・かもしれません。
Ultrabookは、タブレットPCの手軽さとノートPCの便利さを兼ね備えた新しいコンセプト
なあ、最近「ウルトラブック」っていうノートPCが増えてきたよな。
インテルが提唱してる新しいカテゴリーのノートPCですね。
ちなみに商標名なんで、英語で「Ultrabook」って表記しないといけないみたいです。
ところで最近はスマートフォンやタブレットPCが人気ですよね。
でもそれらに使われてるプロセッサーは「ARM系」と呼ばれる組み込み機器用のプロセッサーが主流なんです。
例えばApple社のiPadに搭載されるCPU「A5X」も、ARM系のプロセッサーなんです。
へー、そうなんだ。パソコン市場を牛耳ってるインテルでも、モバイル市場じゃサッパリってことか。
インテルとしては急成長中のタブレットPC市場を指くわえて見てるんじゃ面白くないですよね。そこでインテルは考えました。
「じゃあタブレットPCみたいに軽くて薄いノートPC作ればいいんじゃね?
そしたらウチら、またガッポリ儲かるじゃん?」
そうしてできたのが「Ultrabook」という新しいノートPCのスタイルです。
断言していいのかよ(笑)
でもまあ、そんなとこだろうな。今さらタブレットPC市場に参入できないなら、新しい市場を作ってしまう。巨大企業のインテルらしいやり方だな。
正直、Ultrabookって「インテルによるインテルのための」なんですけど、ノートPCがもっと薄く軽くバッテリーも長持ちするようになれば、ボクらユーザーにもメリットは大きいですね。
で、Ultrabookって従来のノートPCとはどう違うんだ?
Ultrabookの特長を一言でいうと、
ノートPCとタブレットPCのいいとこ取りですね。
インテルはUltrabookのコンセプトを「思いついた時にすぐ使える、好きなところで使える、快適でスマートな性能」って言ってます。今までのノートPCと大きく違うのは、1つ目の「すぐ使える」っていうところですね。
詳しくはこのあとに説明しますけど、UltrabookはタブレットPCのように電源は入れっぱなしで、パッと開いてすぐ使えるスピーディーさを売りにしてます。そのためバッテリーだけで使える時間も、最低5時間以上と決められてます。
なるほど。この動画もタブレットPCのような手軽さをアピールしてるよな。
従来のノートPCでも小さくて軽いのはあるから「いつでも、どこでも」はクリアできるけど、「すぐに使える」とは言えないからな。
従来のパソコンは電源を入れてOSが起動するまで待つという使い方ですから、タブレットPCの手軽さ・スピーディーさに比べたら致命的なハンデですよね。
だからUltrabookでは気軽に持ち歩けてすぐ使えるために、次のような条件があります。
- Ultrabook (ウルトラブック) の主な仕様
- CPUは第2世代以降のインテルCore iプロセッサー
- 本体の厚みは、14インチ以上が21mm以下、14インチ未満は18mm
- 重量は1.4kg以下
- ワイヤレスLANを搭載
- バッテリーで5時間以上は使えること(できれば8時間くらい)
- 休止状態から7秒以内に復帰すること
- 最も安いグレードで1,000ドル以下の価格
一般にはUltrabookの具体的な仕様は公表されてないんですけど、今のところ出回ってる情報を集めると、こういう条件らしいです。
CPUは第2世代以降のインテルCore iプロセッサーを搭載
インテルが作ったカテゴリーだから当たり前ですけど、インテルのプロセッサーを搭載していないとUltrabookとは名のれません。
さらにCPUのグレードは「Core iプロセッサー限定」で、下位グレードのCeleronやPentiumプロセッサーは対象外になってます。
Core iプロセッサーだと、それなりに消費電力も大きいんじゃないか?
Ultrabookに搭載されている第2世代Core iプロセッサーは、超低電圧版っていう消費電力が少ないタイプなんです。CPUクロックも1.6GHz~1.8GHzくらいと低いんでバッテリーも長持ちします。
それにCore i5やCore i7プロセッサーならターボ・ブースト機能が使えるんで、必要になれば自動的にCPUクロックが引き上げられて高い処理性能を発揮できます。
ターボ・ブースト機能って、どれだけクロック数が上がるかが気になりがちだけど、実際には普段のクロック数を下げられることのほうが大きなメリットなんだな。
本体の厚みは21mm以下、重量は1.4kg以下
UltrabookはタブレットPCを意識してるので、薄さも重要な条件になってます。液晶サイズが14インチ未満のモデルは、本体の厚みが18mm以下。14インチ以上は21mm以下となっています。
さすがにタブレットPC並みの薄さはムリですけど、それでも従来のノートPCに比べると、かなり薄い!って感じですね。重さも1.4kg以下ですから、けっこう軽いほうです。※1.5kgなど若干重量オーバーしているモデルもあります。
左はデルのXPS13-Ultrabook。
ボディの最も薄い部分は、わずか6mm。最も厚い部分でも18mmと、Ultrabookの基準を軽くクリア。重さは最小重量で1.36kg。
バッテリーで5時間以上は使えること
Ultrabookのコンセプト「思いついた時にすぐ使える、好きなところで使える、快適でスマートな性能」を実現するには、まず十分なバッテリーの持続時間が必要です。
各社のUltrabook製品を見ると、バッテリーの駆動時間はカタログ値で8~9時間と称しているのが多いようです。実際にはこの7~8割くらいが実働時間ですけど、それでも5~6時間以上は軽く使えそうですね。
それからUltrabookはタブレットPCのように「すぐ使える」ための機能も注目です。
休止状態(ハイバネーション)から7秒以内に復帰
Ultrabookは前述したように、基本的に電源は入れっぱなしで使います。使ってないときは直前の状態をセーブしておいて、次に使うときはセーブデータを読み込んで復帰します。
そのときに短時間で復帰するほうがストレスは少ないので、Ultrabookは休止状態から7秒以内に復帰という条件が与えられてます。
でもそれって「スタンバイ」(スリープ)状態にしとけば、7秒もかからないだろ?
スタンバイはメインメモリに作業状態を保存する方法ですよね。メモリは読み書き速度が速いから、確かに休止状態より素早く復帰することができます。
でもスタンバイだとスリープ中もメモリに電力を供給し続ける必要があるので、それだけバッテリーを消費してしまいます。
かと言って、読み込み速度が遅いハードディスクに保存する従来の「休止状態」では、復帰までに時間がかかりすぎます。
そこでハードディスクの代わりにSSD(Solid State Drive)に作業状態を保存するインテルの「Rapid Start Technology」(ラピッド・スタート・テクノロジ)を使えば、復帰時間を5秒ほどにすることができます。
保存先がフラッシュメモリのSSDですから素早く復帰できますし、休止中は完全に電源をOFFにできるのもメリットです。
それからもうひとつタブレットPCを意識した機能として、同じくインテルの「Smart Connect Technology」があります。
「Smart Connect Technology」は休止状態でもバックグラウンドでメールやTwitterなどの情報を定期的に受信するので、Ultrabookを開いたときには常に新しいメッセージに更新されています。
つまりパソコンを使い始めるたびにメールとかのチェックをしなくてもいいってわけだ。
最も安いグレードで1,000ドル以下の価格
最後に微妙な条件と思えるのが、この価格帯設定です。
一番安いタイプで1,000ドルですから、1ドル≒82円とすると日本円で82,000円ですよね。今どきのノートPCとしては、けして安いとは言えない価格だと思うんです。
確かになあ。一番安くて8万円台だと、主流の価格帯は10万円以上か?
Ultrabookは基本的な構成内容は共通で、主にSSDの容量とCPUの種類が価格を左右するようです。特にSSDが価格を上げている要因っぽいですね。
例えば デルのXPS13-Ultrabook の場合は、次のようなラインナップになってます。
デル製品にしては珍しく、発売前から情報が出されて話題になっていたXPS 13-Ultrabook。後発モデルだけに、他社のUltrabookを研究しつくした抜かりのなさが魅力。 デルは昔からこうした13インチクラスのノートPCがウマイのが特長。 |
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スタンダード | プレミアム | プラチナ | ||
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液晶画面 | 13.3インチ TrueLife? HD WLED 液晶ディスプレイ(1366×768) | |||
WindowsR 7 Home Premium SP1 64ビット | ||||
CPU | 第2世代インテルR Core? i5-2467M プロセッサー(1.60 GHz~2.30 GHz) | 第2世代インテルR Core? i5-2467M プロセッサー(1.60 GHz~2.30 GHz) | 第2世代インテルR Core? i7-2637M プロセッサー(1.70 GHz~2.80 GHz) | |
メモリ | 4GB デュアルチャネル DDR3 1333MHz メモリ | |||
ハードドライブ | 128GB SSD | 256GB SSD | 256GB SSD | |
バッテリー | 6セルバッテリ | 6セルバッテリ | 6セルバッテリ | |
価格 | 89,980円 | 109,980円 | 129,980円 | |
掲載の仕様や価格は2012年4月下旬時点のものです。 最新の情報は、Dell XPS13-Ultrabookのページでご覧ください。 |
やっぱり中心の価格帯は10万円台か。ってゆーより、最低価格が89,980円だと1,000ドル超えてんじゃん!
まあ、1,000ドル以下っていうのはアメリカ本国での条件ですから。実際にアメリカでXPS 13は、999.99ドルからの価格ですし。
円高なのに日本のほうが割高って、納得できねーな・・・
このDell XPS 13が後発モデルってことは、他社のUltrabookもだいたい出揃ってるんだろ?
はい。去年(2011年)から各社のUltrabook製品が続々デビューしてます。今年の3月にDellのXPS 13が発売されて、とりあえず一通り出揃った感じですね。
Ultrabook製品も数ありますけど、今のところ人気が高いのは次の3モデルじゃないかと思います。
HP Folio13-1000
世界最大手のPCメーカーHP社のUltrabook。外資系ですが日本向けの製品は日本国内で製造しているので、製品のクオリティや信頼性に高い評価があります。このHP Folio13-1000は軽量・薄型を追及するよりも、充実したインターフェイスなど実用的な機能を重視。価格は59,850円~。 |
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ASUS UX21Eシリーズ 11.6型液晶 SSD64GB シルバー UX21E-KX064
モバイルに便利な11.6インチサイズのUltrabook。CPUにCore i7プロセッサーを搭載しているので、小さくても処理性能は上々。但しSSDの容量が64GBと少なめなので、クラウドのストレージサービスを利用するといいでしょう。価格:66,798円(Amazon) |
Ultrabookの本命は第2世代目から!
本命は2世代目から、ってどういうこと?
Ultrabookって、まだ買いどきじゃないってことか?
ハッキリ言ってそうですね。
今(2012年4月現在)発売中のUltrabookは、お披露目的な1世代目なんです。
インテルは2013年に登場予定の「Haswell」と呼ばれる第4世代のCore iプロセッサーを搭載するモデルが、Ultrabookの完成形だと言ってます。
ちょっと、整理させてくれ。
今のCPUは第2世代 Core プロセッサー(Sandy Bridge)。
2012年4月下旬から登場するのが第3世代 Core プロセッサー(Ivy Bridge)。
そして来年の2013年が第4世代 Core プロセッサー(Haswell)か。
そうです。
正直まだ第2世代 Core プロセッサーは省エネ性能が、Ultrabookには十分じゃないんです。だからUltrabookが買いどきになるのは、Ivy Bridgeと呼ばれる第3世代のCore プロセッサー搭載モデルからでしょうね。
第3世代 Core プロセッサーについては、また別の機会に特集したいと思いますけど、製造プロセスが第2世代の32nm(ナノメートル)から22nmに微細化されて省電力性能が向上しています。さらに内蔵グラフィックスの性能もアップしてるんで、Ultrabookの完成度が大きく上がるはずですよ。
今年の夏以降になれば、各社から2世代目となるUltrabookが続々とデビューするでしょうね。
そして来年2013年には更に省電力化される第4世代 Core プロセッサー(Haswell)と、タッチパネルに対応したWindows 8を搭載するUltrabookが出ます。これが一応Ultrabookの完成形です。
Windows 8のタッチパネル機能が使えるようになると、タブレットPCのようなデザインのUltrabookも出てきそうだな。
ええ。もうすでに先日の4月11日に北京で行われたIntel Developer Forum (IDF) 2012』で、よりタブレットPCのデザインを取り込んだUltrabookの参考モデルが発表されてます。
おー、これならホントにタブレットPCとノートPCのいいとこ取りだな。正直今のUltrabookだと従来のノートPCをちょっと改良しましたってレベルだけど、このくらいタブレットPCとのハイブリッドになれば、かなりUltrabookってヒットするかもな。
逆に今度は機能的に劣るタブレットPCの勢いが落ちる可能性もありますね。そうなるとインテルのしてやったり状態ですけど。
どうなるかは今後のお楽しみってとこだな。正直最後にこの動画見てやっとUltrabookに興味出たわ。
スマートフォンやタブレットPCに比べると精彩を欠いている既存のパソコン市場ですが、今年2012年はインテルの第3世代 Core プロセッサーの登場に加え、Windows 8の発売など待望のアイテムが相次いでデビューします。
これらのニューアイテムを搭載する2代目となるUltrabookは、かなり勢いのあるヒット商品に育つ可能性大です。『知っ得!パソコン塾』では今後もUltrabookの動向に注視して、新しい情報をお届けしたいと思います。