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スマホ世代はPCが苦手? 日本の若者に必要なPC・AIスキルを解説

基本操作

「今どきの若い人は、スマホもAIも使いこなしているのだから、パソコンにも強いはず」。そう考えがちですが、実際の職場では、ファイルの保存場所が分からない、Excelの表を直せない、メールに資料を添付できないといった戸惑いも起きています。

これは若者の能力が低いという話ではありません。スマホを使う力と、仕事でPCを使って情報を整理する力は別のものです。学校でPCやタブレットを使う機会が増えた今、社会に出る前に何を身につけるべきか、AIとの付き合い方も含めて考えてみましょう。

 

学校の授業でもPCの使い方を学んでいるのでは?

現在の学校では、PCやタブレットを使う授業が以前より大幅に増えています。小中学校では1人1台端末の環境が広がり、調べ学習、発表資料づくり、オンラインでの提出などが行われています。高校では「情報Ⅰ」が必修となり、ネットワーク、データ活用、プログラミング、情報モラルなどを学びます。

つまり、「若い世代はPCに一度も触れずに卒業する」というわけではありません。文部科学省の調査でも、高校生のキーボード入力は小中学生より進んでおり、学校でICTを使う機会自体は広がっています。文部科学省「情報活用能力調査」

ただし、学校での利用は「調べる」「発表用のスライドを作る」「先生に提出する」といった場面が中心になりやすいものです。端末もChromebookやiPadの場合があり、Windowsパソコンで行う細かなファイル管理や、Excelを使った実務的な集計まで十分に経験するとは限りません。

スマホが得意でも、PCの仕事で戸惑う理由

スマホは、目的のアプリを開いて、すぐに操作を始められる道具です。写真を撮る、メッセージを送る、動画を見る、AIに質問する、といったことは直感的にできます。

一方、PCを使う仕事では、複数の作業をつなげる必要があります。

たとえば、会議のあとに報告書を作る場合を考えてみましょう。メモを確認し、共有フォルダーから資料を探し、Excelの数字を集計し、Wordで文書にまとめ、PDFにして、関係者へメールで送る。この途中には、保存場所、ファイル名、添付、書式、共有設定など、スマホだけでは経験しにくい操作がいくつもあります。

大学生を対象にした調査でも、自分用のノートPCを持つ人は多い一方で、コピーや貼り付けのショートカットを知らない人がそれぞれ約4割、フォルダーや階層構造を理解している人は約半数という結果が出ています。PCを所有していることと、仕事で使いこなせることは同じではありません。大学生のITリテラシー実態調査

海外と比べると、日本の若者はどの位置にいる?

となると欧米各国との比較が気になるところですが、「日本の学生は欧米よりPCが苦手」と、一言で順位を付けられる国際テストはありません。WordやExcel、タイピングだけを世界共通の方法で測る調査がないためです。

しかし、PC上で情報を探し、整理し、条件に合わせて問題を解く力については、参考になるOECD調査があります。

少々古いデータとなりますが、2011~2012年に実施された調査では、日本の16~24歳は、自国の年上の世代よりは高い一方、同年代の国際平均では下回り、上位のフィンランドや韓国とは差がありました。OECD「Survey of Adult Skills:Japan」

反対に、日本は読解力や数的処理力では高い水準でしたので、基礎学力が弱いのではなく、PCを使って現実の課題を処理する経験が、比較的少なかったと考えるほうが適切です。

PISA 2022でも、日本の15歳は数学、読解、科学でOECD平均を上回りました。その一方で、学校の活動でデジタル機器を使い、現実の問題について情報を探すことが「ほとんどない」と答えた生徒は日本で52%でした。端末の有無だけでなく、授業で何のために使うかが重要です。OECD「PISA 2022:デジタル時代の学習準備」

AIを使えば、PCの基礎はいらなくなる?

AIに文章の下書きや表の作成案を作ってもらえる時代になりました。しかし、AIはPCの基礎をすべて不要にする道具ではありません。

AIが出した回答を仕事に使うには、次の力が必要です。

・質問の条件を具体的に伝える
・回答の間違いを確認する
・WordやExcelに移して読みやすく整える
・社外秘や個人情報を入力してよいか判断する
・完成したファイルを正しい場所に保存・共有する

たとえば、AIに「売上表を作って」と頼めば、表のたたき台は作れます。しかし、実際の売上データを正しく入れる、計算が合っているか確認する、上司が見やすい形に直す、最新版を共有フォルダーに保存するところまでは、人が責任を持たなければなりません。

AIを便利に使える人とは、難しい命令文を書ける人だけではありません。AIの答えをそのまま信じず、資料として仕上げられる人です。その土台になるのが、PC操作と情報整理の力です。

これから身につけたい「仕事のためのPC・AIスキル」

学生や新入社員に必要なのは、難しい資格を最初から取ることではありません。まずは、次の基本を繰り返し使えるようにすることです。

1.ファイルを自分で管理する
フォルダーを作り、内容が分かる名前で保存します。「最終版」「最終版2」のように増やさず、日付や内容を入れる習慣を付けます。

2.キーボードとショートカットに慣れる
完璧なタッチタイピングは必須ではありません。コピー、貼り付け、保存、検索などを使えるだけでも、作業は大きく楽になります。

3.Word・Excel・メールの基本を覚える
Wordで見出しや表を整える。Excelで合計や並べ替えをする。メールに資料を添付して、分かりやすい件名と本文を書く。まずはこの範囲で十分です。

4.AIは「下書き係」として使う
文章のたたき台、要点整理、関数の説明などを頼み、最後は自分で確認します。住所、顧客情報、社内の未公開資料を安易に入力しないことも大切です。

まとめ:スマホ世代に必要なのは、スマホを否定することではない

今の若い世代は、新しいアプリやAIに親しむ力をすでに持っています。その強みは大切です。一方で、職場ではPCを使って情報を整理し、共有し、責任を持って仕上げる力が求められます。

学校は端末を配る段階から、現実の課題をPCで解く授業へ。企業は「若いからできるはず」と決めつけず、入社時に実務的な基礎研修へ。こうした橋渡しがあれば、スマホに慣れた世代の柔軟さは、AI時代の大きな強みになるはずです。