クラウドコンピューティングとは?

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いつの間にか、みんな知ってて当たり前のように使われている「クラウド・コンピューティング」や「クラウド・サービス」という言葉。実はよく意味がわからないまま「そ、そうだね。これからはやっぱりクラウドだよね!」なんて話合わせてませんか?

ここでは今さら訊けない「クラウド・コンピューティングの概要」と、私たち個人のパソコンユーザーにとって、「クラウド・コンピューティング」にはどんなメリットやデメリットがあるのか?について考えてみたいと思います。

パソコンの内側からインターネットの向こう側へ

クラウド・コンピューティング(cloud computing)という言葉には、また何か画期的で新しいものが生まれたようなイメージがあります。でもその考え方や使われている技術は、今まで使われてきたものを集めてマッシュアップ(混ぜ合わせ)したものです。

用語の詳しい説明は他のWebサイトや書籍に譲りますが、インターネット上のどこかにあるシステムやサービスをクラウド(雲)に例えて、今までパソコンの中でしていたことをインターネットのサービスを利用して行うということです。
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例えば今までだとワープロで書類を作ったり、デジカメ画像を修正しようとしたら、まずパソコンにワープロソフトや画像編集ソフトをインストールするところから始まりますね。

「コンピュータ、ソフトなければ只の箱」というくらい、何かをするためにはまずソフトウェアを用意して、作業するのもデータの保存もすべてパソコンの中で完結したのが、これまでの使い方です。

対してクラウド・コンピューティングは、「ソフトウェアもデータを保存するスペースも、全部インターネットで提供しますよ」というサービスです。

こうした処理を外部に任せるという方法は、コンピュータの初期の頃と似ています。昔はクライアントと呼ばれる端末機からホスト・コンピュータに処理を依頼して、処理の結果が端末機に返されていました。

やがてコンピュータの小型化と高性能化が進むと、現在のパソコンのように一台ですべての処理がこなせる時代に変わります。パソコンはどんどん高性能化し、インターネットも高速になりました。するとこういう素朴な疑問が生まれます。

「こんなに高性能なパソコンって必要あるの?」

CPUが高性能になっても、ハードディスクの容量が大きくなっても、私たちパソコンユーザーは、ほとんどインターネット中心の使い方が多いのではないでしょうか?それならこれ以上高性能なパソコンや、時々しか使わないソフトウェアに高いお金を払うのって、もったいないんじゃない?というわけです。

クラウド・コンピューティングはインターネットとWebブラウザさえあれば、今までと同じことができるというサービスですから、高性能なパソコンも高価なソフトウェアも必要もなく、インターネットの向こう側(クラウド)に用意されたソフトウェアを使って作業したり保存することができます。

クラウドコンピューティングを体験できるサービスはすでにたくさんあります。Googleだけを例にとっても、電子メール・サービスの「Gmail」やワープロ・表計算・プレゼンテーションなどの「Google Docs」、デジカメ画像を編集するなら「Picasa」などがあります。そしてこれらはすべて簡単なユーザー登録をするだけで無料で使えます。
※「Google Docs」は現在、「Google ドライブ」に変わっています。

パソコンユーザーにとって、クラウド・コンピューティングのメリットは?

今までパソコンの中で行っていたことがインターネット上でできるようになると、私たちパソコンユーザーには、どんなメリットがあるのでしょうか?まずはクラウド・コンピューティングのいいところを見ていきましょう。

コストやメンテナンスの手間を減らすことができる

クラウド・コンピューティングは処理も保存もインターネット上で完了するので、高性能で高価なパソコンも、高価なソフトウェアも必要なくなります。

ソフトウェアにかかるコストを節約するならフリーソフトを使えば済みますが、新しいバージョンに変わったときは自分でダウンロードしてインストールしなおす必要があります。でもクラウド・コンピューティングではソフトウェアのアップグレードはサービスの提供者が行いますから、私たちパソコンユーザーはOSの再インストールやアップデートなど、基本的なメンテナンスだけで済みます。

最近はネットブックPCと呼ばれる小さなノートパソコンが人気ですが、ネットブックPCはかなりクラウド・コンピューティングの利用を意識した設計になっています。

ネットブックPCはインターネットが快適に使える程度の性能に抑えて、編集作業や保存はクラウド・コンピューティングのサービスで間に合うという使い方が想定されています。だから高性能なCPUも大容量のハードディスクもいりません。高性能にする必要がなければ、小さく安く作ることができるというわけです。

クラウド・コンピューティングでエコ対策?

この夏は省エネ性能が高い「グリーン家電製品」を購入すると、いろいろな商品やサービスと交換できる「エコポイント」がもらえるようになりました。

ところがパソコンはテレビや冷蔵庫よりずっとたくさんの電気を使いますから、エコな観点からするとパソコンの省エネ対策も重要です。テレビや冷蔵庫を省エネ製品に買い換えても、エコポイントで消費電力の大きな高性能パソコンを買うと、電気代は変わらないかもしれません。

もしパソコンの使い方をクラウド・コンピューティング中心にすれば、ネットブックPCなど電力消費の少ない低い性能のパソコンで間に合うので、電気代をかなり節約できることになります。

Webブラウザさえあれば、OSはなんでもいい

クラウド・コンピューティングはインターネット回線とWebブラウザだけあればいいので、OSはWindowsだろうとMacOSだろうと構いません。

「Google Chrome」や「Firefox」などのWebブラウザは、OSが変わっても同じように使えるので、無料で使えるOSのLinuxでも間に合います。

パソコンを買い換えるときもLinuxを使えば、今までWindowsに払っていた1万円以上の出費がなくなります。ネットブックPCではLinuxを搭載した機種も販売されていますし、マウスコンピューターのようにOSが付属しないパソコンが買えるメーカーもあります。

マイクロソフトはWindowsを普及させて、ワープロや表計算ソフトも当然「Microsoft Office」でしょ!と、パソコンの中を牛耳ることで成長を続けてきました。でもクラウド・コンピューティングでは「Microsoft Office」どころか、Windowsも必要なくなります。

このように、クラウド・コンピューティングを利用すれば、パソコン本体やソフトウェアにかかる出費をかなり減らすことができます。

クラウド・コンピューティングのデメリットは?

ここまではクラウド・コンピューティングのメリットについて考えてみました。でもメリットがあれば当然デメリットもありますよね。

セキュリティに対する不安

勘のいい方なら気づいているでしょうが、データを全てインターネット上に置くことへの不安があります。もしクラウド・コンピューティングのシステムから個人情報が流出したらどうなるでしょう?

例えば表計算で作った住所録や毎月の家計簿、毎日書きつづった日記などが丸裸で流出する、という可能性もあります。

こうしたプライバシーに関するデータは雲の上にあるよりも、やっぱり手元のパソコンの中に置いておきたい気がします。

インターネットが不通だとお手上げ

当たり前ですが、クラウド・コンピューティングは、インターネットがつながらないときには何もできなくなります。

プロバイダも時どきシステム障害やメンテナンスで回線が不通になることがあります。そんなときでもデータやソフトウェアがパソコンの中にあれば作業できますが、全部クラウドに依存していると、ただ回線の復旧を待つしかありません。

またインターネット回線やクラウド・システムが混雑しているときは、快適に作業できないかもしれません。最悪の場合、データの保存中に接続がタイムアウトして、編集中のデータが消えるかもしれません。

そのクラウド・サービスがいつまで存在するかわからない

インターネットの世界は刻々と変わっていきます。今まで使ってきたサービスも、この先ずっと利用できるとは限りません。

特に個人のパソコンユーザーはインターネット・サービスにお金を払いたくない傾向が強いので、有料サービスで収益を上げようとしているクラウド・サービスが、不採算でサービス提供を中止することもあります。

なんでもできる、とは限らない

無料のクラウド・サービスは利用できる機能が制限されるなど、機能をすべて利用できるとは限りません。

クラウドで提供されているソフトウェアやサービスの機能が限定されていると、ここをこうしたいと思ってもできないかもしれません。

標準がない、という不便さ

逆に機能は豊富でも、そのサービスの使い方がわからないということもあります。

WindowsやMicrosoft Officeのような標準的なソフトであれば、使い方がわからなくても検索したりマニュアル本を買って調べることができます。ユーザーが多いと情報も多いというのは大きなメリットです。

でも自分が使っているクラウド・コンピューティングのサービスがちょっとマイナーなものだったりすると、情報を集めるのも一苦労するでしょう。

どこのサービスでも一応はユーザー向けにヘルプや説明を用意していますが、なにを言ってるのかわからない文章だけは、クラウド時代になっても変わらないようです。

あの世とこの世を漂う「浮遊霊」的な使い方

これからはクラウド・コンピューティングだよね!なんて言っても、パソコンの使い方がすぐに雲の上だけに移ることはないでしょう。少なくとも当分のあいだは、クラウド・サービスとパソコンの中の環境は補完しあう状況が続きそうです。

なにをクラウドに任せて、なにをパソコンの中で行うかは人それぞれですが、しばらくは雲の上と下界を行き来するハイブリッドな使い方が続き、やがてゆっくりとクラウドな世界に昇天していくと思います。

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